REBIRTH!富士講プロジェクト-いつまでも 富士山を世界遺産に- [コラムvol.367]

2018.04.09

観光地域研究部次長 主席研究員 吉澤清良

 「いつまでも 富士山を世界遺産に」、これは、富士山を未来まで宝として引き継いでいくことを目的に、PR啓発活動、教育活動、募金活動などを行っている、認定NPO法人富士山世界遺産国民会議(理事長:青柳正規氏、元文化庁長官)のスローガンです。

 本コラムで何度も紹介してきた、山梨県富士山世界文化遺産保存活用推進協議会(以下、協議会(*1))の「REBIRTH!富士講プロジェクト(*2)」に関わる関係者も同じ想いを持って、2015年度から各種事業に取り組んできました。

 私と門脇は、ありがたくも3年間にわたり同プロジェクトに深く関わる機会をいただきました。2017年度で一区切りとなりますが、同プロジェクトを通しての学びや気づきを振り返ってみたいと思います。

REBIRTH!富士講プロジェクト、3年間の取組

 ~事業遂行の鍵となった観光と教育、学芸員との連携・協力
 REBIRTH!富士講プロジェクトでは、2015年度を「企画・開発段階」、2016~17年度を「試行段階」と位置づけ、関係者への綿密な調査(現地調査、アンケート調査、ヒアリング調査等)を踏まえて、ガイド研修会の開催やパンフレット・マップの作成、モデルコースの開発・商品化など様々な事業を行ってまいりました。

 この間、2016年6月には、信仰の対象、芸術の源泉、その普遍的価値を来訪者に紹介する「山梨県立富士山世界遺産センター」(以下、世界遺産センター)が開館しています。

 現在、世界遺産センターの調査研究スタッフで、学芸員の堀内眞氏には、山梨県立博物館ご在籍時より、REBIRTH!富士講プロジェクトの実施にあたり、学術的・専門的なご助言を数多く頂戴しています。

出典:山梨県富士山世界文化遺産保存活用推進協議会

 ■ガイドマップ「富士参詣の道を往く」の作成
2016年度に作成したガイドマップ「富士参詣の道を往く」は、堀内眞氏、また杉本悠樹氏(富士河口湖町教育委員会 学芸員)に執筆、監修いただき、富士信仰の巡礼路やゆかりの地を拘りの赤色立体地図(*3)上に掲載し、詳細な解説を付したもので、利用者からも高い評価をいただいています。

 ■富士信仰を学ぶ「ガイド研修会」の開催
堀内氏には、ガイド研修会の講師もお務めいただきました。同研修会は、地元でご活躍のガイドを主な対象者として、「信仰の御山」としての富士山の理解を高めることを目的としています。皆さん、とても熱心に受講されていましたが、その中でもひときわ高い関心を持って受講されていたのが、世界遺産センターのガイドスタッフでもある坂本賢祐氏でした。

 ■富士信仰を体感する「旅行商品」の開発
2017年度、坂本氏には、新宿発着の一般消費者向けのバスツアーに、計3回、専門ガイドとして同行いただいています。世界遺産センターをはじめ、本栖湖、御師旧外川家住宅、北口本宮冨士浅間神社、またバス車内では、学術的な裏付けにもとづきつつも、工夫を凝らし、分かり易く飽きさせない解説に、参加者が引き込まれていきました。

 2018年2月、3月に催行した富士急トラベルのツアーには、一部、旅行会社や雑誌関係者にもお声かけしてご参加いただきましたが、そうした方々からも、「とにかくガイドさんの説明が素晴らしく、ツアーのお客様からも、ガイドが良くて説明がよい等の声を何度も耳にした。満足度が高いツアーなので、磨いていってもらいたい。」、「富士山なら”富士急”のように社会的意義のあるツアーを催行して行ってもらいたい。」といったご意見を多数頂戴しています。

 その後、富士急トラベルでは、地域貢献といった観点からも富士信仰に関するツアーの商品化を引き続きご検討いただけることとなりました。富士信仰に関するフラッグシップ商品を通して、多くの方々に富士講文化の一端に触れていただき、富士山の世界文化遺産としての価値を理解するよい機会となることを願っています。

REBIRTH!富士講プロジェクトを通して得た学びや気づき

 REBIRTH!富士講プロジェクトの遂行あたり、私どもがあらめて学び、常に留意していたことは、初年度、特に協議会の多様な関係者より語られた、富士山信仰、富士講を正しく伝えることの大切さ、観光の場面に活用することへの配慮でした。

 私ども(公財)日本交通公社では、総勢30名弱の研究員が「公益性」「学術性」「実践性」を意識し、研究・実践の双方で創造的な成果を生み出すために、日々、研究活動に取り組んでいます。大きな組織ではありませんので、各プロジェクトに研究員が企画から実施まで一貫して取り組む、より丁寧に向き合うといったことを大切にしています。

 REBIRTH!富士講プロジェクトにおいても、必ずしも十分ではなかったかもしれませんが、私、門脇もそのような姿勢で取り組んでまいりました。同プロジェクトの進展に少しでもお役に立てたなら幸いです。今後とも、地域の応援団として、見守ってまいりたいと思っております。

 最後に、今回、ご紹介できなかった方々を含め、本プロジェクトにてお世話になった皆様に、あらためて感謝申し上げます。

*1:協議会の下には作業部会が設置され、関係7市町村(富士吉田市・富士河口湖町・西桂町・山中湖村・忍野村・鳴沢村・身延町)より、企画課、観光課、教育委員会(学芸員)、観光関連団体、まちづくり団体等が参画。

*2:「リバース!富士講プロジェクト」(山梨県富士山世界文化遺産保存活用推進協議会)は、多くの方々に、富士講文化の一端に触れていただき、「富士山は神聖な御山、信仰の御山である」という認識を高めていく、ひいては世界文化遺産としての理解の深化を図ることを目的としている。「富士講」とは、富士山への登拝を目的として結成された山岳信仰の民間組織。近世には関東・中部をはじめ全国の一般庶民にまで広がりを見せ、今も全国各地に残る「富士塚」は富士講と深い関わりを持っている。
https://www.jtb.or.jp/researcher/column-worldheritage-fuji-yoshizawa

*3:赤色立体地図では、平面の地図上に地形が立体的に表示される。この赤色立体地図を見れば、溶岩流と神社の位置関係等、自然地形とそこに育まれた文化のつながりも見えてくる。実際の遺跡調査では、この赤色立体地図を用いて、過去の道の痕跡を探っている。富士山に“真向かう”本図は、通常の地図とは異なり南が上を向いている。富士山頂はこの地図の上方面に位置し、富士山に真っ直ぐに向き合うことになる。
https://www.pref.yamanashi.jp/fujisan/rebirth/guidemap.html

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