スポーツイベントを契機とした地域づくり [コラムvol.66]

2009.01.23

研究調査部 菅野正洋
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■マラソンイベントに参加して

 昨年11月、職場の同僚数人とともに、山梨県の富士河口湖町で開催されたマラソンイベント(河口湖日刊スポーツマラソン、以下「河口湖マラソン」)に参加しました。
 事前の準備も十分でなかったため、さすがにフルマラソンとはいかず、湖を一周するやや短めのコースに参加することにしましたが、それでも約27kmの距離となり、レースの途中から足が悲鳴をあげはじめ、終了後も数日間は普通に歩くのも困難なほどでした。
 ただ、秋の青空の下で、湖の水面に映る富士山を見ながら走ることの爽快さはそのつらさを上回るものがありましたし、また何より、地域づくりの観点からも大変参考になる点が多い体験でした。

■地域づくりの手段としてのスポーツイベント

 最近では健康志向の高まりを受けて、ランニングや自転車などの運動がブームになっています。全国各地では、マラソンやトライアスロン、自転車レースなど、各種のスポーツイベントが開催され、中には毎年恒例のイベントとして定着し、地域外から多くの参加者を集める一大イベントとなっているものもあります。
 その中でも代表的なものが2007年から始まった東京マラソンではないでしょうか。東京の名所を巡るコースが設定され、普段は自動車のための空間である都心の道路を走ることができるといった魅力もあり、大変な人気のようで、この3月に開催される「東京マラソン2009」(第3回目)では、申し込みの応募をした人数が26万人以上、定員に対して実に約7.5倍という高い倍率となっているとのことです。
 このように、その地域を舞台として景色や名所を楽しみながら行うスポーツイベントへの参加ニーズは、潜在的にも高いものと思われます。
 以下、今回の経験を通して、こうしたスポーツイベントを通じた地域づくりの効果と、取り組みを進めるに当たってのヒントを考えてみました。

■地域への経済効果を高める

 このような大会では、参加者は大会当日を含めて一定期間、地域に滞在することとなります。一般的に、宿泊業は地域への経済波及効果が大きい産業と言われていますので、開催スケジュールの設定を工夫するなどによって、参加者に一泊でも多く宿泊してもらうことが重要だと思います。
 例えば、「河口湖マラソン」では、朝7時半という早い時間にスタート時間が設定されていました。この大会は県外、中でも東京や神奈川、静岡といった近隣の都県からの参加者が大多数を占めますが、県外から朝一番の電車でやってきたのではスタートの時間に間に合わないため、必然的に参加者の多くは前日の夜に宿泊して当日を迎えることになるわけです。
 もちろん、スポーツイベントを目的として訪れた参加者の方に「おもしろそうな観光地があるからもう一泊していこう」と思わせるような魅力ある観光資源を創出することも重要だということは言うまでもありません。

■地域づくりの機運醸成の契機として

 このようなイベントの開催に当たっては、地域を挙げた実行体制が不可欠です。そのような様子は、地域外からの参加者にとっては、一つになって地域づくりに取り組んでいる、というイメージや口コミによる知名度の向上に結びつき、ひいてはその好印象が「また来年も来てみよう」という再来訪の意向にもつながるものと思われます。
 「河口湖マラソン」でも、コースの各所に設けられた給水所でのサポートをはじめとして、運営に関わるスタッフの皆さんの熱心なバックアップの姿勢にはすばらしいものがありました。多くがボランティアとして参加されている地域住民の皆さんかと思いますが、イベントを地域全体で盛り上げようという意識が伝わってきて印象的でした。
 また何より、このようなイベントは、地域住民の皆さんにとっては、地域外からの参加者の目を通じて自らの地域の姿を再発見、再確認する機会ともなると思います。加えて、地域外からの参加者との交流によって、生きがいや誇りの創出といった効果も期待され、地域づくりに向けて機運が高まるきっかけとなることも期待されます。

 このように、様々な面から効果が期待できるスポーツイベントが全国各地で開催されることにより、人々の新たな「旅の目的」としてより一層定着することを期待したいものです。

 

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