出発から24時間と少し、今回の国際学会の開催地、サルディーニャにようやく到着しました。天候は晴れ、気温は26度。地中海の乾いた風に乗って、カモメが空高く飛んで行きました。さて、今日(2016/10/2)から4日間に渡り、30カ国以上から集まった約200人の研究者が、自然地域における観光に関する諸問題について発表、そしてディスカッションを行います。
自然と歴史の島SARDEGNA
サルディーニャは、地中海の真ん中に位置するイタリア領の島。現在はヨーロッパ各国から多くの観光客が訪れるリゾート地となっていますが、今日に至るまでには様々な歴史の場面がありました。元々、古くは先史時代から人の住んでいたサルディーニャは、フェニキア人、カルタゴ人、ローマ人が支配した後、中世にはスペインの影響を強く受け、その後オーストリア領、そしてサルディーニャ王国の時代を経て、1861年にようやくイタリアの一部となりました。それらの影響は、島に残る遺跡や伝統文化、方言、そして料理などに今でも色濃く残されています。
また、サルディーニャは自然環境においても固有な魅力を持っています。アザラシやイノシシを始めとした希少な動植物や、景観の優れたコスタ・ズメラルダ海岸やジェンナルジェントゥ山地などは、多くの観光客を惹き付ける魅力の源泉となっています。
そんな環境で暮らすサルディーニャに住む人たちは、とても長生きです。
と、先ほどサルディーニャ自治州の観光担当の方が発表していたところです。
TOURISM Naturally 2016
そんなサルディーニャで(本コラム執筆中のまさに)今開催されているのが、「TOURISM Naturally 2016」、自然地域における観光をテーマにした国際学会です。今年が初めての開催で、サルディーニャが第1回目の開催地に選ばれました。
今回のホスト(主催者)は、コロラド州立大学(Colorado State University, USA)とサッサリ大学(University of Sassari, Italy)で、サルディーニャ島北西部に位置するアルゲーロの町にあるホテルやサッサリ大学のキャンパスなどが会場になっています。なお、共同ホスト(共催者)には、華中師範大学(Central China Normal University, China)、ピサ大学(University of Pisa, Italy)、ダービー大学(University of derby, UK)が名前を連ねています。
参加者は、今回はイタリア開催ということもあり、イタリア国内の大学・研究所からの参加が最も多いようですが、米国及び中国からの参加者も多く、他の国からはパラパラと、といった印象です。先ほど行われた基調講演の聴講者も100人ちょっとだったので、国際学会としては比較的こじんまりとした規模だと言えるのではないでしょうか。
一方、今年が初の開催となるTOURISM Naturallyですが、幹事役は他の学会でも同じ並びで見かける研究者であったり、参加者たち同士も初めて会うというよりも「おーひさしぶり」みたいな雰囲気の人たちが多いようで、初日の今日から大いに盛り上がっています。
Social Events
学会での楽しみのひとつが、会期中に開かれる交流イベント(Social Events)です。それは、ホストとなる国、地域が趣向をこらしてゲスト(学会参加者)にその地域の良いところを楽しんでもらうとともに、参加者同士の交流・懇親を深めるものです。
今回のTOURISM Naturally 2016では、先ほど、会場となっているホテル最上階のルーフバルコニーで歓迎レセプション(いわゆる立食パーティー)が開催されました。地中海に沈む夕陽が最後、雲に隠れてしまったのが少し残念でしたが、夕陽に映える歴史地区と海を眺めながらのひとときは良い思い出となりました。
交流イベントは、お国柄や地域性がとてもよく反映されるものです。私もあまり経験が多い訳ではありませんが、米国ではホテルの宴会場などで比較的あっさりと開催される一方で、ヨーロッパ各国では、より町の中に出て行って歴史と文化を感じさせてくれるものが多いような印象があります。以前、ウィーンで参加した国際学会では、王宮を貸し切っての生演奏付きフルコースディナー、からの舞踏会といったこともありました。そこからは、「他の地域では出きまい」といった地域の強い自負のようなものを感じました。現在、日本でもこうした分野における文化財、歴史的建造物の活用が進められています。是非、日本でしかできない体験をしてもらい、世界の人たちを驚かせてみたいものです。
さて、学会はまだ続きます。今回のメインイベントである、郊外の農家レストランを貸し切っての食事会を楽しみにしつつ、しっかりと世界各国の知見を吸収、日本に持ち帰りたいと思います。
以上、地中海の現場からでした。