沖縄で台風に当たってしまったら[コラムvol.268]

沖縄での台風体験

 私は出張で沖縄を訪れることが多くあります。沖縄といえばやはり台風の影響を受けることがしばしばです。特に今夏は、3回あった沖縄出張のうち3回とも台風に当たるという、なかなかの“強運”ぶりを発揮することができました。中でも8月に訪れた石垣島では、“大型で非常に強い勢力”の台風に当たったため、生まれて初めて、本物の大型台風を体験することになりました。

 とにかくすごいのは風です。強い風が吹くたびに窓ガラスがミシミシと音を立て、建物は地震が起こったかのように大きく揺れていました(体感で震度2ぐらいはありました)。常に、「ゴォーーー」という“嵐”としてイメージしていた音がリアルサラウンドで聞こえてきます。窓の外を見ると、雨粒が水平に飛んでいくのが見え、ほとんど隙間のないはずの窓と窓枠の間からも雨水が入ってきていました。夜になると停電が発生し、さらにはボイラーが壊れてシャワーのお湯が出なくなってしまいました…。

 こんなにエキサイティングな体験は滅多にできないので、「これはこれでいいかな…」とも思っていました。ところが私の宿泊したホテルには他に楽しめる施設やサービスがなく、結局、丸2日間ホテルの部屋で缶詰状態になったため、さすがに飽きてしまいました。私の他には、観光で訪れていたとみられる友人グループや家族連れ、外国人旅行者も宿泊しているようでした。彼らは、楽しみにしていた沖縄旅行が台無しになってしまい、仕事で来ていた私よりも、もっとがっかりした気分で台風の2日間を過ごしたのだと思います。

台風に当たってもホテルの中でできること

表1 ホテル内の設備

表1 ホテル内の施設

表2 ホテルのサービス

表2 ホテルのサービス

 これが別のホテルなら事情は異なっていたかもしれません。例えばリゾートホテルなら、停電や大きな被害などが発生しない限りは、屋内のプールで泳いだり、前日とは違うレストランで食事をしたり、体験プログラムに参加したりすることができるでしょう。またこの他にも、宿泊客に少しでも楽しんでもらえるよう、台風の時だけ特別にイベントを実施しているホテルもあるようです。台風でどこにも行けなくなってしまっても、ホテルによってはできることがたくさんあります。

 そこで出張から帰ってきた後、これらの実態が気になったので調べてみました。沖縄本島にある主なリゾートホテル44施設を対象に、台風などの悪天候時にホテルでどんな過ごし方が可能なのか、また台風の時だけ特別に行っているイベントはどのようなものがあるのかについて、ホームページや電話等で調べました。

まず、台風などの悪天候時でも楽しめる施設ですが、最も多かったのが「複数のレストラン・バー」と「温泉・大浴場」、続いて「屋内プール・スパ」でした。また件数は少ないですが、「ライブラリー」を備えているホテルもあり、読書をしたり、音楽を聴いたりしながらゆっくりと過ごす事もできるようです。

 次にサービスですが、一番多いのは、やはり「エステ・マッサージ」でした。「ネイルサロン」や「ヨガ教室」ともあわせると、基本的に女性向けのサービスが多いようです。一方、「体験プログラム」の中には男性や子供が楽しめるものもいくつかあります。例えば「ザ・リッツ・カールトン沖縄」では、バーテンダーを体験できる「カクテルクラス」や、ベッドメイキングやドアマンなどといったホテルの仕事を体験できる子供向けプログラムなど、ユニークなアクティビティが用意されているようです。

台風時のおもてなし対応

表3 台風時の特別なイベント

表3 台風時の特別なイベント

 次に、台風時だけ特別に実施しているイベントについて調べたところ、44施設のうち9施設で実施しているということで、全体の約2割でした。イベントの内容については、最も多かったのが「映画鑑賞会」、他には“エイサーの演舞”や“バルーンアートショー”などの「ライブ・ショー」、ディナーにおける「レストランの割引」、そして“謎解きゲーム”や“シーサー絵付け体験”などといった「体験型イベント」でした。

 これらのイベントを実施しているホテルですが、そのうちほとんどは、悪天候時でも楽しめる施設やサービスが十分に用意されているホテルでした。悪天候時は何もできなくなってしまうホテルよりも、悪天候でも宿泊客を楽しませることに力を入れているホテルの方が、台風時はさらに宿泊客を楽ませようと努力している傾向にあるようです。

 台風に当たったことで満足のいかない沖縄旅行になってしまっても、それは誰のせいでもありません。でももし、宿泊しているホテルで少しでも楽しませる工夫をしてくれたら、沖縄旅行に対する印象もきっと違うものになるのではないかと思います。ホテルのハード面を変えることは難しいかもしれませんが、ソフト面であれば色々と工夫の幅があります。今回取り上げたような台風時の特別なおもてなしの対応が、もう少し増えてくれればいいなと思います。

 そして次回の沖縄出張では“強運”が発揮されないことを期待するところです。