オンパクに学ぶ、観光まちづくりの理論と実践 ~平成25年度観光実践講座より [コラムvol.217]

2014.07.08

観光政策研究部  吉澤清良
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 当財団では、主に自治体の観光や地域振興担当の方々を対象として、これまで毎年「観光基礎講座」「観光実践講座」を開催してきました。「観光基礎講座」では、観光に関する基礎的な知識や観光を取り巻く状況を分かりやすく解説し、「観光実践講座」では、現場で活躍されている方々を講師として、実践に役立つ知識やノウハウの習得を目指しています。

 昨年度の観光実践講座(平成26年2月20日(木)~21日(金))では、大分県別府市で平成13年に「別府八湯温泉泊覧会」として開催され、その後、NPO法人ハットウ・オンパク(平成16年9月設立)、一般社団法人ジャパン・オンパク(平成22年4月設立)の指導により全国約45カ所で展開されるなど、観光まちづくりの効果的・実践的な手法として大きな広がりをみせている「オンパク」について、改めて着目しました。

 平成25年度観光実践講座  オンパクに学ぶ、観光まちづくりの理論と実践~“地域活性化”の秘訣、“課題解決”のヒント!  http://www.jtb.or.jp/publication-symposium/jissen-2013

 本講座では、オンパクの仕掛け人である鶴田浩一郎氏(一般社団法人ジャパン・オンパク代表理事)、野上泰生氏(NPO法人ハットウ・オンパク運営室長)の講義、当財団独自調査(オンパク実施団体へのアンケート調査、ヒアリング調査)の結果報告を通じてオンパクの総括を試み、オンパクに対する理解を深めました。また、鶴田氏、野上氏に加えて、地域でのオンパク実践者(信州諏訪温泉泊覧会「ズーラ」、能登旨美オンパクうまみん)、受講者間の意見交換を通して、持続可能な観光地づくりのヒントを学びました。

 ここでは、外部講師の熱意に満ちたメッセージの一部を、皆様に紹介します。

■講義2:「オンパク」とは何か?~別府オンパクにその神髄を学ぶ講師:NPO法人ハットウ・オンパク 運営室長 野上 泰生氏

 野上氏は、「まち歩きが『シビックプライド』の再生へ」「関係×経済×環境、見えてきたまちづくりの法則」「オンパクはチャレンジの機会を与える場」「チャレンジが生む地域の変化」「オンパクは『地域の苗床』」「『公共政策』としてのオンパクの可能性」との話を、分かりやすくお話くださいました。

 特に、「オンパクが自主財源で独立できるという幻想のようなものがあり、それに縛られている。しかし、オンパクは中間支援組織。オンパクは公共投資、社会的インフラへの投資だと考えている。インフラというのは、人と人との関係。そういう社会的なインフラへの投資だと割り切ってやれればいい」との言葉には、先駆者としての力強さがありました。

野上 泰生氏

■講義3.地域でオンパクをどう位置づけ、活用するか~全国45カ所に展開するオンパク手法とは? 実施地域に効果的な活用のヒントを学ぶ 講師:一般社団法人ジャパン・オンパク 代表理事 鶴田 浩一郎氏

 鶴田氏は、「まちは盛衰する、地域再生に必要な理屈・理念」「イベントで地域の底力を上げる『オンパク手法』」「地域のプラットフォームと求められる人材」「マーケティングの観点でコンセプトも深掘り」「オンパクは初めの3年が勝負」との話を、各地での豊富なご経験を踏まえてお話になりました。

 中でも、「オンパクは、新たな市民社会の活力の底上げを行う仕組み、そのためのソーシャルキャピタルという役割が基本。オンパクと協力して、観光協会がデスティネーション・マーケティングの部分を担ったり、行政の観光課がよりマーケティングに近い思考を持つことが必要とされてくる」との言葉には、行政の受講者の多くが感じるところがあったようです。

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■講義6-1:信州諏訪温泉泊覧会「ズーラ」~オンパク継続・定着に必要な考え方と方策とは~ 講師:信州諏訪温泉泊覧会「ズーラ」実行委員会 運営委員長 北澤 勝己氏

 北澤氏は、「官民・将来を担う30〜40代が実行部隊に」「地域共通の課題や悩みの解決にオンパク手法を導入」「回を重ねるごとに圏域拡大、プログラムも多様化するズーラ」「オンパクの効果は『定量』と『定性』で考える」「オンパクは非営利部門、地域の観光振興をグロスで向上」との話を、実践者ならではの具体例を交えてお話くださいました。

 行政職員でもある北澤氏の「オンパクが収益事業として自立するというより、もう少し広く考え、地域全体に還元するという形がいい。企画部門など非営利部門は、単独ではお金を生まない部門。他の事業と連携した取り組みを行い、地域の観光振興をグロスで向上させていくという考え方が必要ではないか」との言葉には、確かな説得力がありました。

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■講義6-2:能登旨美オンパクうまみん~地域におけるプラットフォームのあり方とは~ 講師:能登旨美オンパクうまみん実行委員会 事務局長 森山 奈美氏

 森山氏は、「『見方』を変えれば『味方』が増える」「マチ・ミセ・ヒトの関係の再生を目指す」「能登半島地震で抱いた危機感がオンパクへとつながる」「チャレンジの場を生かし、地域資源を生かす担い手を育てる」「新しい公共のために、一歩踏み出しやすくする場とサービスを提供」「オンパクとの組み合わせが生む相乗効果」「プラットフォームにはコーディネーターが必要」とのお話を、北澤氏同様、具体例を交えてお話くださいました。

 特に、「地域の課題を解決するためにプラットフォームを作るだけではダメ。地域の人たちのつながりを作ってあげるコーディネーターが必要で、そのコーディネーターには、地域をどうしていくかという『哲学』、地域を編集する『技術』、そして『行動』、この3つが求められる」との言葉には、森山氏の実践に裏打ちされた想いが表れていました。

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 2日間の受講を通して、受講者からは次のような感想が寄せられています(一部抜粋)。

 私どもは、今回の講座を機会に、地域主体の観光を進めたいと考える各地の皆様が、これをきっかけに具体的な行動を起こしていただければと願っています。

 そして、実は!
 今回、同講座の講義録をJTBFホームページにて特別に公開をすることにいたしました。是非、ご一読ください!!

*平成25年度観光実践講座講義録
http://www.jtb.or.jp/publication-symposium/jissen-kouza-kougiroku

 なお、当財団では、今年度から「観光基礎講座」「観光実践講座」を統合し、より内容を充実させた「観光地経営講座」としてリニューアル。平成25年12月に発刊した『観光地経営の視点と実践』をテキストとして用いて先月(6/26-27)開催し、大変ご好評をいただきました。こちらにつきましても準備が整い次第、講義録を公開してまいります。

 当財団では、今後も、皆様方のお役に立つ情報を広く発信してまいりたいと思っております。ご期待ください!

*平成26年度観光地経営講座 観光地経営の“8つの視点”と実践 ~組織を見直して実行力を高める!
http://www.jtb.or.jp/publication-symposium/kouza

*テキスト『観光地経営の視点と実践』
http://www.jtb.or.jp/publication-symposium/researcher-publication-kankouchikeiei

 

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