観光地での住民意識調査実施を通して感じたこと[コラムvol.290]

2016.02.15

観光文化研究部 研究員 門脇茉海

観光が地域への誇りを育む

 当財団に就職してから、もうすぐ丸3年が経とうとしています。この3年間、地域の方々と一緒に地域の魅力探しを重ねてきました。その中では、地域の方が自分の地域の魅力を再発見し、地元の良さに改めて気づくということがたびたびありました。また、そうした地域の方の姿を目にしたことで、私自身も自分が生まれ育った地元のことをもっと知りたいという思いを強くしました。

 この3年間で、観光に取り組むことは、“郷土愛”“地域への誇り”を育むことにつながるということを学びました。

老舗観光地ならではの課題意識に触れる

 今年度、とある老舗の観光地で、地域の方々や行政の方々のご協力のもと、観光に関する住民意識調査(アンケート調査)をさせていただくことになりました。これまでは、観光に取り組み始めてからまだ日の浅い地域での業務が多かったのですが、このプロジェクトで初めて、長年観光に取り組んできた地域と関わることになりました。

 私は、アンケート票の設計から調査の実施、調査結果の集計といった一連の業務を担当しています。調査項目は、暮らし全般に関すること(地域活動への参加頻度など)、仕事に関すること(仕事満足度など)、観光に関すること(観光に対する満足度など)、地域の資源や魅力に関すること(地域資源の経験率など)の大きく4つから構成されています。

 調査開始にあたって、まずは、どのような項目について調査するべきか、どのようなことを聞いてみたいか、地域関係者の方々にヒアリングを行いました。ヒアリングの際は、あらかじめ作成したアンケート票の素案を示しながら、さらに必要な項目や削除してもよい項目などをうかがって回りました。

 ヒアリングを重ねる中、観光産業に携わる住民の方から非常に印象的なお話をうかがいました。準備していたアンケート票の素案には、「あなたはこの地区に住んでいることを誇りに思いますか」という地域への誇り度合いを尋ねる質問と、「あなたは今後もこの地区に住み続けたいですか」という今後の居住意向を尋ねる質問、また、「今後も住み続けたい理由」を尋ねる質問を準備していたのですが、その方は、「住み続けられない理由も把握する必要がある」とおっしゃいました。

 「この地区は観光産業がほぼ住民によって担われている。この地区が今後も魅力的な観光地として持続していくためには、人口を維持し、質の高い人材を確保することが大切。だけれども、本当はここに住み続けたくても、様々な事情で住み続けられない方もいる。だから、住み続けられない理由も聞かなければならない」

 こうした視点は、長年観光地の住民として観光産業に携わってきたからこその課題意識だなと感じました。このお話を聞き、「住み続けたくない理由」を尋ねる質問をアンケート票に追加しました。

 そして、昨年の秋~冬にかけて、地区内にお住まいの方全員に対して、アンケート調査を実施させていただきました。

 集計されたアンケート結果をみると、事前に指摘があった通り、「この地区に住んでいることを誇りに思うけれども、今後は住み続けられない」と考えている方の層が一定程度いることが分かりました。また、その理由としては、「買い物が不便」「交通利便性が悪い」「気候・自然が厳しい」などが挙げられていました。

 これまで観光が地域への誇りを育むということを強く意識してきた私にとって、このアンケート結果は強いインパクトのあるものでした。

地域それぞれで異なる課題

 今回の住民意識調査の実施を経験して、観光に取り組むにあたっての課題は、それぞれの地域ごとに異なっているということを学びました。今後も、様々な業務に携わる中で、自分の知見をさらに広めていきたいと考えています。

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