たびとしょCafe担当者のつぶやき [コラムvol.453]

はじめに

私が当財団(以下、JTBF)に就職して早くも今年で9年目、観光文化振興部(異動当初は観光文化情報センター)の企画室に異動して3年目を迎えました。

観光文化振興部は、観光分野の研究成果と人をつなぐ、研究・情報プラットフォームの構築・拡大を大きなミッションとし、旅の図書館、編集室、企画室の3つのセクションがそれぞれの業務にあたっています。旅の図書館では蔵書閲覧サービスの提供や蔵書資料を用いた様々な展示を通して、編集室では機関誌『観光文化』や『旅行年報』等の発刊を通して、そして企画室ではWEBサイトによる情報発信や相談窓口の運営のほか、「旅行動向シンポジウム」や海外研究者との研究会開催等を通して、研究・情報プラットフォームの構築・拡大に向けて活動しています。

今回は、こうした活動のひとつである、「たびとしょCafe」についてご紹介します。

たびとしょCafeとは?

たびとしょCafeは、観光に関わる“人と情報”“人と人”の交流機会を提供することを目的とした、誰でも参加可能なミニシンポジウムで、2014年に始まりました。毎回テーマに応じたゲストスピーカーをお招きし、前半はゲストスピーカーからの話題提供、後半は参加者や当財団研究員を交えての質疑応答という構成です。ゲストスピーカー、参加者、JTBF研究員がフラットに交流し、知見の共有やネットワーク構築につなげることで、各自の活動へのヒントを得ていただくことを目指しています。これまで、26名のゲストスピーカーをお招きし、様々なテーマでお話をしていただいてきました。

新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、2020年度以降のたびとしょCafeは全てオンラインでの実施となっていますが、それ以前は、毎回テーマにちなんだ軽食も準備して、肩ひじ張らない親しみやすい雰囲気づくりにも努めてきました。

参加者の方も、観光協会、行政、大学の先生や学生、旅行会社、交通、出版、金融業界、シンクタンク等、観光という枠にとどまらず様々な方にご参加いただいています。

※たびとしょCafeの概要はこちらから(https://www.jtb.or.jp/library/tabicafe/)。

企画のこだわり~メッセージを込める~

私は、2019年開催の第17回から企画・実施を担当しています。企画にあたっては、参加者の方に伝えたいメッセージは何か?を考えることを大切にしています。各回に込めたメッセージを、現在展示中のギャラリー展示からの引用でご紹介します。

第17回たびとしょCafe

 2019年6月9日(日)、みちのく潮風トレイル全線開通式典に参加しました。式典が開かれた夜には、現場の最前線で活動している関係者のみなさんが集まって、にぎやかなお祝いの会が開かれました。官と民、住民とよそ者、年上と年下・・・、といった様々な違いを超えて一致団結しているその姿に、本当に多くの人が東北を想って活動し、そして、東北の素晴らしさを心から楽しんでいるのだと感じたひとときでした。
 私自身は復興エコツーリズム推進モデル事業で東北太平洋沿岸地域に関わった経験があり、そこで知り合った素敵な人たちの取り組みを紹介したいという思いで、この回のたびとしょCafeを企画しました。一人でも多くの方に、東北の魅力が伝わることを願っています。

第18回たびとしょCafe

 “銀座におでかけ”と聞けば、誰もがちょっと気分が浮き立つような心持ちになるのではないでしょうか。いつもよりおめかしして出かける様子が目に浮かびます。と同時に、“高級店”“敷居が高い”というイメージもあるかもしれません。
 そんな銀座のまちづくりは、意外なことに、人と人との顔が見える非常に濃厚な関係によって成り立っていました。「町会、通り会、業界団体、同窓会など、一人が様々な組織に複層的に関わっていることで、非常にきめ細やかな関係性ができ、これが実行力につながっている」そうです。こうした日々の地道な積み重ねが大事だと言い切る姿に、銀座が銀座であり続ける理由を感じた回でした。

第19回たびとしょCafe

 「文化財の観光資源としての開花」(『明日の日本を支える観光ビジョン』)に始まる文化と観光をめぐる近年の動きに対しては、様々な立場から様々な意見が表明され、なかには好意的な反応も、否定的な反応も見られます。
 この回のたびとしょCafeには、文化財の所有者、コンサルタント、行政職員、観光事業者、研究者と、様々な立場の方にご参加いただきました。地域や文化と観光との適切なバランスとは何かを考え、そのバランスを保っていくためには、様々な立場から多くの意見を交わして知見を積み重ねていくことが欠かせません。“文化”と“観光”の双方が、お互いの価値観を正しく知り、互いにリスペクトしあうことが、望ましい観光活用への第一歩だと思います。

第20回たびとしょCafe

 新型コロナウイルス流行の影響を受け、2020年度のたびとしょCafeは全てオンラインでの実施となりました。いつものようにおやつを食べながらの会にはできませんでしたが、人と会って話す機会が減っているなか、遠方の方ともリアルタイムに意見交換できたのは、貴重な時間となりました。
 「いくら残したい古民家があっても、核にある人材がいないケースではプロジェクトは思うように進まない。ノオトのスタンスは、熱意ある地域の人と一緒に、運命共同体として事業を進めていくというもの」という伊藤さんの言葉が心に残りました。どんなプロジェクトでも、やはり最後は“人の情熱”にかかっているのだと思います。

後方支援としての役割

研究部門での最初の6年間を、地域の方や役場の方と直接顔の見える関係のなかで過ごしてきたため、企画室にやってきた当初は、間接的にしか地域と関われない状況をもどかしく感じることもありました。

ですが、企画室は、様々な人と情報、人と人をつなぐことが仕事です。研究部門での6年間で私自身が大きく影響を受けてきた人たちや取り組みについて、さらに多くの人に伝えられる立場にいると分かった時、大きなモチベーションが生まれました。

JTBFは、今年度より新たな経営計画「Challenge2026」を掲げ、新たな一歩を踏み出しました。そこには、研究・情報プラットフォームのさらなる強化も明記されています。コロナ禍という大変な状況ではありますが、人と情報、人と人をつなぐことで、こうした困難な状況を打開するための新たな気づきをもたらせるよう、これからも取り組んでいきたいと思います。