観光分野に迫るデジタル化の波 [コラムvol.406]

2019.10.07

観光政策研究部 上席主任研究員 相澤美穂子

 以前、本コラムにて、引越先である東京郊外の最寄りのスーパーでは現金しか使えず閉口したことを書いたのですが(地域のキャッシュレス化を推進するために [コラムvol.368])、2019年10月の消費税増税に伴う「キャッシュレス・ポイント還元事業」によって、ようやく電子マネーやクレジットカードが使えるようになりキャンペーンの効果を実感しています。キャンペーンをきっかけに海外に比べて遅れていると言われるキャッシュレス化が全国的に進むことを期待しています。

デジタル化が進む海外諸国

 さて、海外でキャッシュレス化が進んでいる国といえばまず挙げられるのは中国です。中国では昨年から日本でも普及し始めたQRコード決済が主流です。

 先日、実際に中国に行く機会があったのですが、現金はおろかクレジットカードも想像以上に使えない状況に驚きました。

 ATMの設置数も日本に比べて極端に少なく、QRコード決済がなければ水1本すら買えない徹底ぶりです。その分、QRコード決済の使い勝手は非常に洗練されており、レストランでの注文はテーブルに貼られているQRコードから注文しそのまま決済。駐車場でも壁に貼られているQRコードを読み取り、自車のナンバーを入力して決済するだけ。駐車券も出口での支払いも不要で、一連の手続きがとてもスムーズでした。あらゆるサービスがQRコード決済と紐づいていてスマホ1台ですべてが完結する快適さを実感しました。

中国での駐車場の様子:左側にあるQRコードで駐車料金を決済します

 また、中国においてデジタル化の進展はキャッシュレスだけではなく、至る所で進んでいます。 例えば、杭州市にある「Flyzoo hotel」では、チェックインはロビーに設定されているセルフチェックイン機で行います。サポートにスタッフが1名立っているだけで、ロビーにはフロントがありません。ルームキーはなく、部屋の入退室は顔認証で行います。ルームサービスはロボットが運搬し、到着すると部屋の中に置かれているスマートスピーカーに到着を知らせるようになっているそうです。

Flyzoo hotelのセルフチェックイン機:スタッフは1名いるだけです

 こうしたデジタル化の流れは中国以外でも広がっています。

 例えばシンガポールのチャンギ空港。2017年に開業した第4ターミナルではチェックインから荷物の預け入れ、税金の還付手続き、出国手続きなど一連の手続きのほとんどが機械化されています。 実際にターミナルを訪れてみると、完全に無人ではないものの一般的な空港と比べると圧倒的にスタッフの数が少ないことに驚きました。出国手続きの無人化は他のターミナルでも行われており、外国人も対象です。待ち時間もなくスムーズに手続きを行うことができました。

チャンギ空港の出国手続き端末:係員の姿はほとんどありません

観光産業の活性化のこれからのカギはデジタル化

 観光分野で挙げられる大きな課題の一つには人材不足と、働く人の給与水準の低さがあります。 少子高齢化がますます進む中で、この問題は年々深刻になっており、課題解決のためには業務の効率化を進めるほかありません。

 そんな中、今回紹介した事例のようにIT技術によってカバーできる業務は機械に任せて、技術でカバーできない複雑な業務に人材を集中させることは解決策のひとつとなります。 実際にシンガポールでは日本と同様に人材不足が深刻化しており、そのためにデジタル化を推し進めているそうです。 先に紹介したチャンギ空港に関する記事によると(※1)、デジタル化により人員を2割ほど抑えることができる試算になると書かれていました。

 近年、デジタル技術は飛躍的に進化しています。特に、来年から商用サービスが開始される携帯電話の5Gが普及すると、自動運転等の様々な技術も次々と実用化が近づいてきます。 今後さらに加速度を増してデジタル化が進む中、観光の分野でもIT技術を取り入れることを真剣に考えなければならない時期がいよいよ来たのではないでしょうか。

※1:「シンガポールに出現した「無人空港」の凄み」(東洋経済オンライン)

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